専門の先生に聞いてみました
INTERVIEW
喘息について、検査について、
正しく理解することが治療へのチカラになります。
コメンテーター
高尾 和志 先生
伊勢丘内科クリニック 院長
継続が何より大事なのに、中断してしまう方も少なくない喘息治療。
そんな患者さんたちのチカラになりたいと日々、温かく厳しく励まし続ける高尾先生に、モチベーションの保ち方と秋冬の注意点についてお聞きしました。
アレルギー、インフルエンザ、
注意することが多い秋冬
秋から冬にかけて、症状を悪化させないために、喘息患者さんには注意していただきたいことがあります。
まず、花粉症。ブタクサ、ヨモギ、ススキなど、秋も花粉症の原因となる植物が多いので、注意が必要です。今は様々なアレルゲンの検査ができますから、自分のアレルギーの原因をできるだけ把握しておくことをお勧めします。
また、春にスギ花粉症症状が強い方は今のうちにスギ花粉舌下免疫療法なども考慮されるとよいでしょう。寒暖差や台風・低気圧が来たときの気圧の変化は症状を誘発しますので、マスクして出かけたり、体温調節などに気をつけてください。そして、大事なのは風邪をひかないことです。インフルエンザの予防接種は必ず受けて欲しいですね。早めに予防接種をできるように、接種の予約はもちろん、接種日にむけた体調管理もしっかりと行いましょう。
「咳が続く」「急に咳が出る」
それは喘息による咳かもしれません
「風邪は治ったのに咳が続く」「接客中に急に咳が出て困る」などの理由で病院を訪れる患者さんの多くは、ご自分が喘息であるとは思っていません。大きく息をしたとき、ちょっと大きな声で話したり、笑ったりしたときに咳が出ることはありませんか?このような咳は喘息の症状である可能性があります。呼吸器疾患を専門に診ている医師は、問診と、診察時の所見でほぼ喘息だとわかりますが、それだけで「あなたは喘息です!お薬を続けることが大切です」と宣告されても、なかなか納得できないというのが、みなさんの本音ではないでしょうか?
喘息とは、気道の表面が慢性的に炎症を起こして小さな刺激にも過敏な反応を示してしまう病気です。肌が荒れるとジクジクと汁が出るように、気道の炎症部位から粘液がしみ出るために痰がからみ、腫れて気道が狭くなって呼吸がしにくくなります。根気強く治療を続ければ、症状をゼロに抑えて健康な人と変わらない生活を送ることができるのですが、逆に、症状が治まったからと自己判断で治療を中断してしまうと、いずれまた炎症がひどくなって症状が出ます。炎症を繰り返すと皮膚と同じように気道表面が硬くなり、症状も治りにくくなるので、継続的な治療が何より重要です。大切なのは、患者さん本人が前向きに治療に取り組むこと。その第一歩は、診察や検査で何を調べているのか、しっかりと理解することです。
検査の意味をしっかり理解しましょう
問診や聴診の後に、診断を確定させるためにいくつかの検査を行うことがあります。
例えば、フローボリューム曲線、モストグラフ、呼気一酸化窒素(NO)濃度測定などが挙げられます。フローボリューム曲線は、思い切り大きく息を吐き出したときのフロー(息を吐く速さ)とボリューム(吐いた息の量)から、呼吸機能の状態をみる検査で、最近では健康診断などで行うこともありますが、数値だけでなく波形が特に重要です。
モストグラフは、普通に呼吸をしたまま気道の状態を調べる新しい検査方法です。喘息患者さんは気道が狭くなって息を吐き出しにくくなっていますが、モストグラフでどの程度吐き出しにくくなっているかを、「気道抵抗」という数値で調べることができます。結果は色分けされ正常ならば緑、抵抗が強くなるに従い黄色→赤→青と異常がわかりやすく表示されます。
喘息患者の気管支には「好酸球」という細胞が炎症を起こしています。炎症があると吐き出した息の中の一酸化窒素(NO)の濃度が高くなることが知られており、NO濃度測定も、炎症の有無、程度が数値でハッキリと示されるわかりやすい検査です。このほかにも病院で行う検査はいろいろあると思いますが、検査結果のグラフや数字が何を表しているのか、症状が悪化または改善したときに検査結果はどう変わるのか、医師にたずねてみてください。病院で行う検査とその結果の意味を理解すると、目には見えない気道の状態が自分で確認でき、治療に前向きに取り組めると思います。
「ステロイド」という言葉を恐れないで!
治療を続けることが大事です
さて、検査を行って喘息と診断されると、治療が始まります。
喘息の治療には、吸入ステロイド薬という気道の炎症を抑えてくれるお薬を主に使います。
ステロイド薬は怖いというイメージを持つ方がいらっしゃいますが、喘息で使う吸入ステロイド薬は少量の薬剤を炎症を起こしている気道に直接届けますので、全身性の副作用はほとんどありません。勝手にお薬を止めたりせずに、医師に指示された通りにしっかり続けるようにしましょう。治療継続のモチベーションを維持するためにも、わからないことがあれば医師や薬剤師に遠慮なく質問してください。
初診時は、咳などの症状が苦しくて説明を聞く余裕がないことも多いかと思います。2回目、3回目の受診のときに、改めて聞いてみるのもよいと思います。
目標をもって、自分を褒めながら前向きに!
ハッキリした目標があると、治療を中断したくなったときのはげみになります。
最初の目標は「症状がゼロ」。聴診で何度大きな呼吸をしても咳が出ないようになれば、ほぼ目標は達成でしょう。
痰は咳ほどには速やかにはなくなりません。徐々に減っていくのが一般的な経過です。次の目標は検査値が正常になること。フローボリューム曲線、モストグラフ、呼気一酸化窒素(NO)測定など、診断時は異常値だった検査の値をできるだけ正常に回復させることを目標にしましょう。
症状がなくなり検査値が回復したら、いよいよ最終目標です。薬を最小限まで減らしてその状態を維持することです。治療成果を常に前向きに捉えることも大切です。「咳がまだ残ってる」ではなくて「以前の10分の1くらいに減った」。「痰はまだ残っているが、フローボリューム曲線はかなり正常に近くなった。」と、前向きに考えるようにしてみてください。
喘息は治療を長く続けることが必要な病気ですが、症状をゼロに抑えて、明るい気持ちで付き合っていけるのです。努力した自分を褒めてあげながら、治療を続けましょう!